グリザイアの果実 天音√について
これほどまでに完成度の高いエロゲは他にはないと思う。
いや、俺自身そこまで数をこなしたわけでもないので、探せばもっと他にもあるんだろうけど、まあなんにせよエロゲのあるべき姿を示した作品である。
何をもって完成度が高いとするか、エロゲとしてのあるべき姿とは何か。
それはエロゲが「仮想現実」として成立しているか否かだ。
紙芝居という評価を受けることも多いエロゲが、それでもコンテンツとしてこうして成立している理由は、エロゲーマーにとってエロゲとは仮想現実だからだ。エロゲーマーがアニメや漫画ではなくエロゲを求める理由は、エロゲ世界への没入を体験することを求めてるからだ。
俺も一作終えるごとに毎回ロスになっている。やはり他の媒体と違って没入感が段違いだ。
その点において、グリザイアは神ゲーなのだ。
CGや音楽、そして声優の全てが高水準なのはもちろんだが、やはりシナリオの完成度が高すぎるのだ。
エロゲにおいて最も重要な、作品世界に没頭できるプロセスを完璧に踏襲している。
エロゲに仮想現実という「体験性」を与えるのは、一人称視点の他に、選択権だ。
グリザイアは、選択枝の設け方が非常に上手い。
天音√では、幸せなカタルシスを得るか、全てを失い地獄へ落ちるか、どちらの方向にも傾き得る未来が、全て自分の選択にかかっているというクライマックスのシーンでの選択を要求している。
救済というカタルシスを得るかの瀬戸際という、これ以上ないほど作品世界へ没頭してる最中なのだ。そしてそこで、プレイヤーの選択が天音を生かすか殺すかを決めるのだ。
この瞬間、プレイヤーの意識は主人公と完全に同化する。
無敵のエージェント9029として、そしてなにより天音を愛する一人の男として、グリザイアという世界に生きれるのだ。
選択肢が少ないと酷評されることもあるこのゲームだが、少なくとも、選択肢だけやたら設けてエロゲを作ったような気になっているゲームよりかは全然いいのだ。
このライターなら時間を預けても安心かもしれない。
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